屋上

昨日までの空は、一面灰色。 見えないあの子には、一昨日帽子を盗まれました。 今度は白の浮かぶ青空。 あの子も今日は穏やかで、しかも前からやってくる。 今日はいい天気。紙飛行機もよくとびそうです。 飛行機を押し出すと、 あの子達は飛行機を押し上げる。 すると飛行機はビルの隙間を通って、私の視界から消えた。 私はたくさんの飛行機を…少し違うかな。 私の生きる、私にみえる世界を少し綴った、 たくさんの彼らを飛ばす。 私の日常、私の世界を皆に伝えてもらうために。 彼らは皆、ゴミ箱に捨てられるかもしれない。 彼らに綴った私の世界は、理解されないかもしれない。 それでもいい。 でも、もし私の世界が必要な人がいるなら、 私の世界を分かってくれる人がいるなら、 その人に届いてほしい。 そんな人が、いるのかは分からないけど。 私の周りに、私と同じ世界が見えるひとはいなかった。 でも、見えたことを言っているだけで、嘘は言っていない。 だから誰も分かってくれなくても平気だった。 だけど、やっぱり少し悲しくなってくる。 私と同じ人に会ってみたい。 私と同じ、少し変わった世界が見える人に……。 一度でいいから、そんな人と話がしたい。 でも、周りにそんな人はいない。 だから私は遠くにいく。そんな人を探しにいく。 私の住んでいた街は、小さかった。 いつも見上げていたビル。広い道路。 ここから見下ろせば、何もかもが小さく見える。 こんなに小さいなら、探し人がいないのも納得できる。 遠くには、私の探す人はいるのかな? それとも、私しかいないのかな? どっちにしても、それはかなり先の話だと思う。 それでも私は探しにいく。 私がみてきた世界を分かってくれる人を探しに。 今日から。 今日はいい天気。紙飛行機は、よく飛んだ。 次は、私の番。 ――――――――――― 『今日午前◇時ごろ、○○市のマンションで、市内に住む女子高校生が屋上から飛び降りました。近くにいた男性が119番通報をして病院に運ばれましたが、まもなく死亡しました。遺書はなく、警察はこの事件を自殺とみて、詳しい調査を進めています……』